「ミカンキイロアザミウマの基本生理と防除」 本種は、葉や花弁などの組織内に産卵するため薬剤が効きにくい。幼虫は植物の表面に現れるとすぐに食害を開始する。この状態では移動能力は低く、薬剤にも比較的弱い。 成虫は「ウマ」の異名通り、跳躍するように移動する。「飛翔」する能力は弱く、グライダーのように滑空する。盛んに跳躍したり、植物の高いところへ上るのも風を捉えやすくするため。高さ別にトラップを仕掛けたデータでは高さ1mで90%、2mで7%、3〜5mで3%となっており、他のアザミウマより更に低く跳ぶ。 成虫も低温には比較的強く、神奈川では問題なく越冬できる。雑草の芽や葉柄部の隙間に身を隠して越冬する。逆に高温には比較的弱く、高温期には他種が優占種になることが多い。 本種の♀成虫は羽化後3日目ごろから産卵を始める。この際に花粉をエサにすると産卵数、発育ともに優れる。実際に研究のために飼育する場合はマツ花粉(安価)をエサにすることが多い。 これらの生態から薬剤に頼らない対策を以下に述べる。 側窓にネットを張ると激減する。材質によっても違いますが、1mm目で5割減、0.8mm目で7割弱に減る。また、温室周辺に防草シートを貼ることも効果的である。本種が生息できない環境作り(彼らにとっては広大な砂漠と等しい)になるのはもちろん、一端地面に降りた個体が飛び立ちにくくなる。これらの資材にシルバーなどの反射資材が織り込んであると、本種の方向感覚を混乱させ直接の飛び込み量も減らせる。 シクラメンなどでは夏季の花摘みが重要である。とにかく花粉を与えないことが最重要。 天敵類を用いた防除法も検討されているが、花卉類では現状では実用的ではない。