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火傷病(かしょうびょう)


Tag: 病害 果樹 リンゴ ナシ 細菌

概要

 火傷病は、細菌 Erwinia amylovora を病原として、リンゴ、ナシ等のバラ科植物に発生する病害。日本国内ではこれまで発生していない。
 症状としてはリンゴ等では、葉が火にあぶられたようになるため、この名で呼ばれている。
 病原細菌は花器や傷口から侵入すると見られ、花腐れ、枝枯れをおこす。更に進展し、主枝、主幹に侵入すると胴枯れ、枯死を起こす。壊死した細胞には細菌粘液(菌泥)の溢出が見られる。
 英名はfireblight(fire blightという表記もあり)であり、炎(fire)枯れる(blight)と症状から付けられた名称のようだ。
 なお、国内で発生したことのあるナシ枝枯細菌病の病原細菌は、Erwinia amylovoraに近縁ではあるが異なっており、Erwinia amylovoraのbiovar4と分類する提案がなされている。このナシ枝枯細菌病は2006年3月現在、根絶されている。

地域

 18世紀にハドソン川流域で見つかったので、米国東部の風土病だったと見られている。
 その後、北米全域、ニュージーランド、イギリス、エジプトなどに広まっている。

媒介昆虫

 ミツバチ、マメコバチなどの訪花昆虫は感染樹の花粉とともに病原細菌を媒介する可能性がある。
(菌泥がこれらを誘引するという事もあるようだ)-出典2

話題

 日本は植物防疫法により、火傷病宿主植物の輸入を禁止している。しかし、1994年、火傷病が発生しているアメリカからのリンゴ果実輸入を、一定の検疫措置がとられることを条件に解禁した。ところが、2002年6月、米国はこの措置を過剰で貿易障壁になっているとしてWTO(世界貿易機関)に訴えた。2005年7月、日本は敗訴し、その後の措置改正により「輸出検査時における果実の成熟検査」が行われたリンゴが入ってくることになった。

各種資料から想定される宿主

火傷病防疫指針 侵入警戒調査 調査対象植物

調査対象植物は、次に掲げる宿主植物とする。
 かりん、せいようかりん、びわ、まるめろ、アロニア属植物、かなめもち属植物、ざいふりぼく属植物(しでざくら等、さんざし属植物(さんざし等 、しゃりんとう属植物(しゃりんとう、コトネアスター等 、しゃりんばい属植物(しゃりんばい等 、てんのうめ属植物、ときわさんざし属植物(ピラカンサ、ときわさんざし等 、なし属植物(なし類 、ななかまど属植物(ななかまど等 、ぼけ属植物、りんご属植物(りんご、かいどう類)

"improvement of strategies for the management of fire blight"

 E.amylovoraは広範なバラ科植物で病原性を持ち、その範囲は40属200種に及ぶ。  バラ科の4亜科、ナシ科、バラ科、サクラ亜科、シモツケ亜科の何処までが宿主になるかもはっきりとしていない。
 もっとも感受性の高いナシ亜科からバラ亜科のラズベリー(Rubus idaeus)まで、更にサクラ亜科に属するスモモ(Prunus salicina)までという報告すらある。
 <作業中>

亜科果樹鑑賞樹
Maloiceae
(ナシ)
Eriobotrya japonica(ビワ)Amelanchier spp.(シデザクラ、ジューンベリー)
Cydonia oblongaマルメロChaenomeles japonica(ボケ)
Malus domestica(リンゴ)Crataegus monogyna(サンザシ)
Mespilus germanica(西洋カリン)crataegus azarolus
Pyrus communis(西洋ナシ)Cotoneaster spp.(コトネアスター属の数種)
Pyrus pyrifolia(和ナシ)Pyracantha spp.(ピラカンサ属の数種)
Sorbus aucuparia(ナナカマド)
Sorbus domestica
Stranvaesia spp
Amygdaloideae
(サクラ亜科)
Prunus salicina(Japanise plum)
Rosoideae
(バラ亜科)
Rubus idaeus(Raspberry bush)

"fire blight of rosaceous plants"

 <作業中>

上記3資料に出てくる植物の分類学上の位置づけ

バラ科
(Rosaceae)
ナシ亜科
(Maloideae)
アロニア属チョコベリー、チョークベリー等
カナメモチ属
ザイフリボク属
サンザシ属サンザシ等
シャリントウ(コトネアスター)属シャリントウ、コトネアスター等
シャリンバイ属シャリンバイ等
タチバナモドキ属ピラカンサ、トキワサンザシ等
テンノウメ属
ナシ属ナシ等
ビワ属ビワ
ボケ属カリン
ボケ属
マルメロ属マルメロ
リンゴ属リンゴ、カイドウ等
ナナカマド属ナナカマド等
サクラ亜科
(Prunoideae)
サクラ属スモモ
バラ亜科
(Rosoideae)
イチゴラズベリー
シモツケ亜科
(Spireoideae)

※バラ属には4亜科あります。バラ亜科、サクラ亜科、ナシ亜科、シモツケ亜科です。  上記の表だとほとんどがナシ亜科で、前2つは出てないですね。。。
 バラ亜科、サクラ亜科にはウメ、サクラ、モモなどポピュラーな樹木が含まれていますが、感染しないのかな?
 出典の9を見ると感染(発病せずに)するようにも読めますが、、、(自信なし)
 感受性のある植物は、自然発病調査・接種試験によって、39属200種近くに上る。

 米国のmohanによれば「噴霧接種により、栽培中のスモモ、アンズ、セイヨウスモモ、セイヨウミザクラの未成熟果実に病原性が認められた」  mohanってこの人かしらん。

品種による感受性

HardModerateLow
AppleIdaredFujiGolden Spur
JonathanGala
Reine des ReinettesGolden Delicious
Rome BeautyGranny Smith
BraebumJonagold
Cider appleAvrollesPeau de ChienJudor
Apple rootstocksM.9M.7Novole
M.26Robusta5
PearAbate FetelDocteur Jules GuyotBlanqulla
BartlettConference
Doyenne du ComiceCoscia
General LeclercHarow Sweet
Passe CrassaneMaxine
Magness

Susceptibility to fire blight of commercial cultvars or species of apple,pear and rootstocks(Van der Zwet and Beer,1991;Le Lezec et al.,1997)

化学的防除法

 細菌病であるので効果が期待できるのは抗生物質(streptomycin,oxytetracycline,kasugamycin,flumequine)、銅剤(copper sulfate,copper oxychloride,copper hydroxide )などか。
 なお、当然の事ながら国内で火傷病未発生である日本で火傷病に登録のある農薬はない。

参考、出典

  1. リンゴ火傷病菌のリンゴ成熟果実への侵入と生存 中央農研 H16研究成果情報
  2. リンゴ火傷病が日本に侵入するリスクの推定法 H15農業環境研究成果情報
  3. ニュージーランドにおける火傷病の発生生態と防除(畔上耕児ら) 植物防疫 平成18年3月号
  4. リンゴ火傷病における受容性と抵抗性の誘導について(関西部会講演要旨) 日植病報.46(1),1980
  5. 病原微生物学授業情報
  6. Fire Blight(書籍)
  7. Fireblight
  8. 外務省>日本のりんご火傷病に対する検疫措置

コメント 、改訂履歴等

  1. とりあえず Sekizuka -- 2006-02-24 (金) 17:33:19
    作成
  2. ちょこちょこ修正 Sekizuka -- 2006-03-14 (火) 18:24:57
    中央農研・病害防除部・細菌病害研究室の畔上さんに色々教えてもらって修正。
    よくよく見たら、偉い人だった模様。(^^;)
    http://narc.naro.affrc.go.jp/byogai/saikin/toppage.htm
  3. 畔上耕児 -- 2006-03-14 (火) 23:58:26
    火傷病について、恐れすぎず軽視せず、正しい認識を持って頂けるよう願っております。
    1.火傷病菌種内の細分類であるbiovarは、未だ広く使われるに至っていないので、「火傷病はErwinia amylovoraのbiovar1-3を病原とした細菌病である。」の「のbiovar1-3」は削除してもいいと思います。
    2.「同じErwinia amylovoraのbiovar4を病原細菌としたものにナシ枝枯細菌病があり、こちらは既に国内で発生している。」は、「国内で発生したことのあるナシ枝枯細菌病の病原細菌は、Erwinia amylovoraに近縁ではあるが異なっており、Erwinia amylovoraのbiovar4と分類する提案がなされている。」が、いいと思います。なお、ナシ枝枯細菌病は、現在根絶されています。
    3.このページに私の名前が出ていることを教えてもらい、私がお話したことも書かれていることが分かりましたが、今後もこのページを見続けられるとは限らず、内容すべてに責任をもてませんので悪しからず。偉い人ではありません。これが最も大きな間違いです。
  4. >3 Sekizuka -- 2006-03-15 (水) 13:14:42
    お呼び立てしてすいません。1,2について、直してみました。

    >内容すべてに責任をもてませんので悪しからず。
    当然の事だと思います。そう言う規定にもなっています
    とは言え(「だから」、か?)、研究成果などを気軽に書いていただければ幸いです。使い勝手などは同じ敷地内にサーバー管理者がいますので、相談して下さい。  (その時は木浦さんよろしく)
    >偉い人ではありません。これが最も大きな間違いです。
    不愉快な表現だったら失礼しました。
    当県で室長というと知事>部長>室長>課長ぐらいなもんで。脊髄反射的に書いてしまいました。
  5. スモモ? 畔上耕児 -- 2006-03-16 (木) 01:07:13
    (1)スモモ:スモモの病気の症状から火傷病菌が検出されたとの報告がありますが、火傷病が激しく発生していたリンゴ園に囲まれたスモモからであり、スモモを宿主としてよいかどうか慎重になるべきだ、との指摘もあります。私は、宿主と書いてよいのかどうか、判断しかねます。
    (2)防除薬剤:抗生物質や銅剤は効果があると思いますが、当然のことながら、火傷病の発生していない日本では、火傷病に登録のある薬剤はありません。
    (3)データの発信は慎重に:火傷病の情報発信に際しては、不正確さによってパニックを起こしたり、誤解されたりすることのないよう、身の細る思いをしている方もおられます。ブリリアント・カットのダイヤモンドのように完璧な文に仕上げて、誤解を招かない、批判に耐えられるようなものにしておかないと危険かも。とはいえ、完璧ではありえない人間のやることですから、それは非常な難問ではあるのですが。
    (4)話題の項:話題の項のところは、「日本ではアメリカからのリンゴの輸入を防疫上の理由から制限していた。しかし、WTO勧告により」で切れていますが、つなげるならこういうことです。
     日本は植物防疫法により、火傷病宿主植物の輸入を禁止している。しかし、1994年、火傷病が発生しているアメリカからのリンゴ果実輸入を、一定の検疫措置がとられることを条件に解禁した。ところが、2002年6月、米国はこの措置を過剰で貿易障壁になっているとしてWTO(世界貿易機関)に訴えた。2005年7月、日本は敗訴し、その後の措置改正により「輸出検査時における果実の成熟検査」が行われたリンゴが入ってくることになった。
    (5)研究成果:私たちは、横浜植物防疫所、果樹研究所、静岡大学とともに、実験を行い、「火傷病菌を果梗(果柄)に接種すれば(幼果ばかりでなく)成熟果実内にも侵入しうる」、「火傷病は成熟果実によって長距離伝搬される可能性がある」、という実験結果を得ました(あくまでも、可能性があるということであり、伝搬される、というデータではありません!)。「火傷病菌は5℃冷蔵果実中で少なくとも6か月間生存しうる」という結果を得ました。横浜植物防疫所では、菌液に浸けたハエがナシ果実に飛んでいって、予め傷をつけておいた部分から感染を起こした、という結果を得ました。
     しかし、私たちのデータは、WTOの専門家会合において、自然条件下ではありえないとして否定されています。WTOの報告書は法律用語的英語で書かれていたので苦労して斜め読みしましたが、まさに多数の弓矢の集中砲火を浴びている弁慶状態であると感じ、ドキドキしながら読みました。
     微生物の生態の全容を明らかにするのは今の科学では非常に難しいことですので、どうしてもいろいろな見方や自分中心の意見が入り込んでしまう面があります。ただ、これまでに論文に書いた内容は、絶対にひっくり返されることがないと思っているので、救われています。
     また、閉鎖系温室内で栽培したリンゴ樹を使って、「9月下旬〜10月上旬に10万細胞程度の火傷病菌を結果枝に接種すると(実際の圃場で、秋に、結果枝に10万細胞程度いるかどうか示すデータはないが、細菌数として異常に大きな数でもない)、それは離層を通過し果実内に侵入しうる、しかし果実には病徴が現れない」、という結果を得ています。
    (これらの過程で、暗闇でほのかに光るリンゴという幻想的なものを見ることができました。)
    (6)所感:我々が果実伝搬の可能性があると言っているのだから、輸出側は再度よく調べ直して欲しかった。ただ、可能性がゼロであることを証明するのは、困難なことですが。
    (7)不愉快というわけではないのでご心配なく:ただ修正しただけです。私は悪意がなければ、相当に無神経なことでなければ、腹を立てたりすることはありませんから。
  6. >5(1) Sekizuka -- 2006-03-16 (木) 16:23:37
    確かに、表現が微妙なところですね。。。
    複数の出典からそれぞれ引用、に変えてみました。
  7. 5(2) Sekizuka -- 2006-03-16 (木) 16:25:00
    登録がない事を明記しました。
    (承知の上で英語表記のままにしたんですが)
  8. >5(3) Sekizuka -- 2006-03-16 (木) 17:34:41
    関係者が神経をすり減らしているのはわかっているつもりですが、情報に関しては既に国境なんてありません。
    実際にwikipediaにも「火傷病」のページがあり、内容もかなり詳細です。今後は完璧を目指すより、注意書きに気を配りつつ、リアルタイムに出していく必要もあると思います。情報量が少ないのが一番危険だと思いますので。
  9. >5(4) Sekizuka -- 2006-03-16 (木) 17:35:35
    そのまま使わせていただきました。
  10. >5(5)(6) Sekizuka -- 2006-03-16 (木) 17:43:53
    こういう話が上手く実際の生産者に伝わると良いな、と思います。
    外交上の問題は技術だけでは割り切れないのはしょうがないですが、事情がわかった方が、「何処か遠いところ」で決まったと感じなくて良いような。。。
    イマイチ割り切れない感情は残りますが、決まってしまった以上、受け入れて対策を練るしかないですから。チームワーク良く対処していくしかないですね。
  11. 有り難うございます 畔上耕児 -- 2006-03-16 (木) 17:57:14
    指摘事項に応えて下さいまして、有り難うございました。
  12. 日本農業新聞2007/5/18 -- 2007-05-21 (月) 00:11:49
    ニュージーランド産リンゴ検疫見直し 7月にも全品種解禁/農水省
    リンゴのコドリンガと火傷病を対象とした検疫条件を見直すとのこと。
  13. 農林水産省プレスリリース -- 2007-07-13 (金) 18:56:25
    http://www.maff.go.jp/j/press/2007/20070713press_1.html
    本日付けで、ニュージーランド産りんごの生果実の輸入が解禁になりました。
    コドリンガ及び火傷病の侵入の恐れがないことを確認した、とのことです。
  14. '''' -- 2007-09-13 (木) 21:51:54
    人間がコドリンガの幼虫を食べたらどうなるか
  15. イチゴの角斑細菌病 苺FUJISAWA -- 2007-09-13 (木) 23:27:28
    ここを読んでて、イチゴの角斑細菌病が気になった。
    進入が進むと、生産量が減る事が重大で、どうしたらいいのか?
    と、心配してしまうのです。
    こういう病害虫は、要注意、外来病害虫、注意が必要、アピールが必要。
    注意報が出ないことを望むなあ・・・。
    イチゴの角斑細菌病は、被害が止まったのかな?
    気になっています。
  16. 農水省プレスリリース 2015/6/1 -- 2015-06-03 (水) 15:21:01
    韓国における火傷病の発生に伴う宿主植物の輸入停止措置について
    韓国のナシの樹において火傷病が発生。輸入停止となるのは、主にニホンナシ、セイヨウナシ、リンゴの生果実など。
    お名前: 題名:

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読み=かしょうびょう,英語=fireblight
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