湿度は敵か?
植物病害の多くが多湿条件で発生が増えるので、風通しを良くして乾燥気味に管理する方が良いされています。
では、空気が乾燥していれば乾燥しているほど良いのでしょうか?
植物は動物と違って自力で移動して水を調達することができないので、むしろ乾燥の方が致命的です。よって、乾燥防止対策が発達しています。その一つとして、相対湿度で70%以下になると気孔を閉じて、蒸発散を止めるのですが、これが生育に与える影響としては大きく2つの事が考えられます。
蒸発散により葉の水分が減ると、その負圧により根から水が吸い上げられますが、それに伴って地中の肥料分も吸い上げられます。気孔が閉じると、肥料分が地上部に届かなくなるわけです。
次に、気孔が開いている時は水(水蒸気)が出て行くだけではありません。空気中の二酸化炭素(CO2)を取り込む事(ガス交換)も行っています。二酸化炭素は光合成の原材料なので、気孔が閉じると光合成も限界に達してしまう事になります。実際に、オランダなどでは光合成を最大化する為に乾燥時に加湿している事例もあります。
では、空気中の湿度を常時70〜90%に保っているのが良いのでしょうか?
これは作物によっても異なります。野菜などでは概ね、その通りなのですが、観賞用の花卉類では事情が変わります。販売後に飾られる室内、特に最近の家屋内では湿度が50%程度の事が多いようです。気孔が閉じない程度の相対湿度で栽培すると気孔の開閉能力が落ちる事が知られています。所謂、花保ちの悪い花になってしまう訳です。そこで光合成を行わない夜間に乾燥状態にして気孔を閉じる能力を発達させるという処理も研究されています(なお、この話は蘭のようなCAM植物では当てはまりません)