何故、脚の本数が重要か?
「ハダニは脚が8本だから昆虫(6本)ではない」という話を聞いたことがあると思います。不思議に思ったことは無いでしょうか?
外観上の違いというなら、例えば口器の違いもあります。カメムシの口器は針状ですが、ハダニ類の口器も針状です。逆にバッタやトンボの口器は齧るのに適した形状をしています。口器の形状で分けても良さそうです。
現在の分類学では、進化の道筋を念頭に置いた分類をしています。進化の過程では、全く新しい器官が作られることは稀で、前からある器官が流用される事がほとんどです。脚のような大きな器官をコントロールするような神経は後から発生することは考えにくく、脚の本数が違うと言うことは、かなり昔にそれらの種が分化した証拠となります。
このような進化の過程を念頭に置いた分類は、農薬の効果や安全性を考える際に重要です。有機リン系殺虫剤の多くは、昆虫だけではなく、ダニの類にも効果のあるものも多く、これだけ範囲が広いとヒト(ほ乳類)にもそれなりに効果があります。
もちろん、同じほ乳類でも毒性は違います。例えば、タマネギなどに含まれる硫化アリルはヒトにとってそれ程の毒ではありませんが、イヌやネコにとっては、かなりの猛毒です。逆にヒトを始めとした高等猿類に必要なビタミンCはイヌやネコにとって必要ではありません。これは原始的な猿の仲間から進化する際に、ビタミンCが豊富な食物(果実類)を中心に摂取していた証拠とされています(ビタミンC合成能を失っても餌から摂取できた)。
もちろん、このような考え方には例外もあります(例:虫と菌の両方に効果がある剤)。農薬のラベルを見ると、効果のある虫、病名などが出ています。たまにこのような目で見てみると新しい発見もあるかもしれません。