&size(30){火傷病(かしょうびょう)}; ------------ #contents *概要 [#jed1f98b] 火傷病は'''Erwinia amylovora'''を病原とした細菌病である。 症状としてはリンゴ等では、葉が火にあぶられたようになるため、この名で呼ばれている。~ 病原細菌は花器や傷口から侵入すると見られ、花腐れ、枝枯れをおこす。更に進展し、主枝、主幹に侵入すると胴枯れ、枯死を起こす。壊死した細胞には細菌粘液(菌泥)の溢出が見られる。~ 英名はfireblight(fire flightという表記もあり)であり、炎(fire)枯れる(blight)と症状から付けられた名称のようだ。 なお、国内で発生したことのあるナシ枝枯細菌病の病原細菌は、'''Erwinia amylovora'''に近縁ではあるが異なっており、'''Erwinia amylovora'''のbiovar4と分類する提案がなされている。このナシ枝枯細菌病は2006年3月現在、根絶されている。 **地域 [#kd126060] 18世紀にハドソン川流域で見つかったので、米国東部の風土病だったと見られている。~ その後、北米全域、ニュージーランド、イギリス、エジプトなどに広まっている。 **媒介昆虫 [#n09c3e91] ミツバチ、マメコバチなどの訪花昆虫は感染樹の花粉とともに病原細菌を媒介する可能性がある。~ (菌泥がこれらを誘引するという事もあるようだ)-出典2 *話題 [#r64f606e] 日本ではアメリカからのリンゴの輸入を防疫上の理由から制限していた。~ しかし、WTO勧告により *宿主(分類中) [#d479ee2c] |バラ科&br;(Rosaceae)|ナシ亜科&br;(Maloideae)|アロニア属|チョコベリー、チョークベリー等| |~|~|カナメモチ属|| |~|~|ザイフリボク属|| |~|~|サンザシ属|サンザシ等| |~|~|シャリントウ(コトネアスター)属|シャリントウ、コトネアスター等| |~|~|シャリンバイ属|シャリンバイ等| |~|~|タチバナモドキ属|ピラカンサ、トキワサンザシ等| |~|~|テンノウメ属|| |~|~|ナシ属|ナシ等| |~|~|ビワ属|ビワ| |~|~|ボケ属|カリン| |~|~|ボケ属|| |~|~|マルメロ属|マルメロ| |~|~|リンゴ属|リンゴ、カイドウ等| |~|シモツケ亜科&br;(Spireoideae)|ホザキナナカマド属|ナナカマド等| |~|サクラ亜科&br;(Prunoideae)|サクラ属|スモモ| |~|~|?|?| |~|バラ亜科&br;(Rosoideae)|キイチゴ属|ラズベリー| |~|~|?|?| %%※バラ属には4亜科あります。バラ亜科、サクラ亜科、ナシ亜科、シモツケ亜科です。%% %%上記の表だとほとんどがナシ亜科で、前2つは出てないですね。。。%%~ %%バラ亜科、サクラ亜科にはウメ、サクラ、モモなどポピュラーな樹木が含まれていますが、感染しないのかな?%%~ %%出典の9を見ると感染(発病せずに)するようにも読めますが、、、(自信なし)%%~ 感受性のある植物は、自然発病調査・接種試験によって、39属200種近くに上る。 ([[これ:http://www.tdx.cesca.es/TESIS_UdG/AVAILABLE/TDX-0202105-141230//tlre1de8.pdf]]のP38辺りだと40属200種か) 米国のmohanによれば「噴霧接種により、栽培中のスモモ、アンズ、セイヨウスモモ、セイヨウミザクラの未成熟果実に病原性が認められた」 mohanって[[この人:http://info.ag.uidaho.edu/magazine/winter_2000/fireblight.html]]かしらん。~ *品種による感受性 [#o4090c4d] ||Hard|Moderate|Low| |Apple|Idared|Fuji|Golden Spur| |~|Jonathan|Gala|| |~|Reine des Reinettes|Golden Delicious|| |~|Rome Beauty|Granny Smith|| |~|Braebum|Jonagold|| |Cider apple|Avrolles|Peau de Chien|Judor| |Apple rootstocks|M.9|M.7|Novole| |~|M.26||Robusta5| |Pear|Abate Fetel|Docteur Jules Guyot|Blanqulla| |~|Bartlett||Conference| |~|Doyenne du Comice||Coscia| |~|General Leclerc||Harow Sweet| |~|Passe Crassane||Maxine| |~|||Magness| Susceptibility to fire blight of commercial cultvars or species of apple,pear and rootstocks(Van der Zwet and Beer,1991;Le Lezec et al.,1997) 元は[[これ:http://www.tdx.cesca.es/TESIS_UdG/AVAILABLE/TDX-0202105-141230//tlre1de8.pdf]]のP39のTable.3 ん〜、[[こっち:http://www.tdx.cesca.es/TESIS_UdG/AVAILABLE/TDX-0207105-180808//tjco01de10.pdf]]のP43だとまたちっと違うな。 *化学的防除法 [#xf472bcc] 細菌病であるので効果が期待できるのは抗生物質(streptomycin,oxytetracycline,kasugamycin,flumequine)、銅剤(copper sulfate,copper oxychloride,copper hydroxide )などか。 *その他 [#x1ba8205] -[[火傷病防除指針(農水):http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20060120press_2c.pdf]] *参考、出典 [#s184307f] +[[リンゴ火傷病菌のリンゴ成熟果実への侵入と生存:http://www.naro.affrc.go.jp/top/seika/2004/kanto/kan04010.html]] +[[病原微生物学授業情報:http://www.tuat.ac.jp/~arie/Arieclasses/PPG05classQA.html]] +[[リンゴ火傷病における受容性と抵抗性の誘導について (関西部会講演要旨):http://nels.nii.ac.jp/els/contents_disp.php?id=ART0003031534&type=pdf&lang=jp&host=reoabs&order_no=Z00000000875271&ppv_type=0&lang_sw=&no=1142215073&cp=]] +[[リンゴ火傷病が日本に侵入するリスクの推定法:http://www.affrc.go.jp/seika/data_niaes/h15/niaes03012.html]] +[[火傷病について(農水):http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20041028press_1e.htm]] +[[ニュージーランドにおける火傷病の発生生態と防除(畔上耕児他):http://www.jppn.ne.jp/shuppan/month.html]] +[[Fire Blight(書籍):http://www.cabi-publishing.org/bookshop/BookDisplay.asp?SubjectArea=Pla&Subject=Crop+Protection&PID=1476]] +[[Fireblight:http://www1.agric.gov.ab.ca/$department/deptdocs.nsf/all/agdex4149?opendocument]] +[[国内で遺伝子組み換えリンゴが開花:http://www.fsic.co.jp/bio/news/news/2002/news81.html]] *コメント 、改訂履歴等 [#w9411f71] +''とりあえず'' &color(blue){Sekizuka}; -- &color(green){&new{2006-02-24 (金) 17:33:19};}; &br; 作成 +''ちょこちょこ修正'' &color(blue){Sekizuka}; -- &color(green){&new{2006-03-14 (火) 18:24:57};}; &br; 中央農研・病害防除部・細菌病害研究室の畔上さんに色々教えてもらって修正。 &br;よくよく見たら、偉い人だった模様。(^^;) &br;http://narc.naro.affrc.go.jp/byogai/saikin/toppage.htm +'''' &color(blue){畔上耕児}; -- &color(green){&new{2006-03-14 (火) 23:58:26};}; &br; 火傷病について、恐れすぎず軽視せず、正しい認識を持って頂けるよう願っております。 &br;1.火傷病菌種内の細分類であるbiovarは、未だ広く使われるに至っていないので、「火傷病はErwinia amylovoraのbiovar1-3を病原とした細菌病である。」の「のbiovar1-3」は削除してもいいと思います。 &br;2.「同じErwinia amylovoraのbiovar4を病原細菌としたものにナシ枝枯細菌病があり、こちらは既に国内で発生している。」は、「国内で発生したことのあるナシ枝枯細菌病の病原細菌は、Erwinia amylovoraに近縁ではあるが異なっており、Erwinia amylovoraのbiovar4と分類する提案がなされている。」が、いいと思います。なお、ナシ枝枯細菌病は、現在根絶されています。 &br;3.このページに私の名前が出ていることを教えてもらい、私がお話したことも書かれていることが分かりましたが、今後もこのページを見続けられるとは限らず、内容すべてに責任をもてませんので悪しからず。偉い人ではありません。これが最も大きな間違いです。 &br; +''>3'' &color(blue){Sekizuka}; -- &color(green){&new{2006-03-15 (水) 13:14:42};}; &br; お呼び立てしてすいません。 &br;1,2について、直してみました。 &br; &br;3 &br;>内容すべてに責任をもてませんので悪しからず。 &br; &br;当然の事だと思います。そう言う規定にもなっています。 &br;とは言え(「だから」、か?)、研究成果などを気軽に書いていただければ幸いです。使い勝手などは同じ敷地内にサーバー管理者がいますので、相談して下さい。 (その時は木浦さんよろしく) &br; &br;>偉い人ではありません。これが最も大きな間違いです。 &br;不愉快な表現だったら失礼しました。 &br;当県で室長というと知事>部長>室長>課長ぐらいなもんで。脊髄反射的に書いてしまいました。 +''スモモ?'' -- &color(green){&new{2006-03-16 (木) 01:07:13};}; &br; (1)スモモ:スモモの病気の症状から火傷病菌が検出されたとの報告がありますが、火傷病が激しく発生していたリンゴ園に囲まれたスモモからであり、スモモを宿主としてよいかどうか慎重になるべきだ、との指摘もあります。私は、宿主と書いてよいのかどうか、判断しかねます。 &br;(2)防除薬剤:抗生物質や銅剤は効果があると思いますが、当然のことながら、火傷病の発生していない日本では、火傷病に登録のある薬剤はありません。 &br;(3)データの発信は慎重に:火傷病の情報発信に際しては、不正確さによってパニックを起こしたり、誤解されたりすることのないよう、身の細る思いをしている方もおられます。ブリリアント・カットのダイヤモンドのように完璧な文に仕上げて、誤解を招かない、批判に耐えられるようなものにしておかないと危険かも。とはいえ、完璧ではありえない人間のやることですから、それは非常な難問ではあるのですが。 &br;(4)話題の項:話題の項のところは、「日本ではアメリカからのリンゴの輸入を防疫上の理由から制限していた。しかし、WTO勧告により」で切れていますが、つなげるならこういうことです。 &br; 日本は植物防疫法により、火傷病宿主植物の輸入を禁止している。しかし、1994年、火傷病が発生しているアメリカからのリンゴ果実輸入を、一定の検疫措置がとられることを条件に解禁した。ところが、2002年6月、米国はこの措置を過剰で貿易障壁になっているとしてWTO(世界貿易機関)に訴えた。2005年7月、日本は敗訴し、その後の措置改正により「輸出検査時における果実の成熟検査」が行われたリンゴが入ってくることになった。 &br;(5)研究成果:私たちは、横浜植物防疫所、果樹研究所、静岡大学とともに、実験を行い、「火傷病菌を果梗(果柄)に接種すれば(幼果ばかりでなく)成熟果実内にも侵入しうる」、「火傷病は成熟果実によって長距離伝搬される可能性がある」、という実験結果を得ました(あくまでも、可能性があるということであり、伝搬される、というデータではありません!)。「火傷病菌は5℃冷蔵果実中で少なくとも6か月間生存しうる」という結果を得ました。横浜植物防疫所では、菌液に浸けたハエがナシ果実に飛んでいって、予め傷をつけておいた部分から感染を起こした、という結果を得ました。 &br; しかし、私たちのデータは、WTOの専門家会合において、自然条件下ではありえないとして否定されています。WTOの報告書は法律用語的英語で書かれていたので苦労して斜め読みしましたが、まさに多数の弓矢の集中砲火を浴びている弁慶状態であると感じ、ドキドキしながら読みました。 &br; 微生物の生態の全容を明らかにするのは今の科学では非常に難しいことですので、どうしてもいろいろな見方や十分中心の意見が入り込んでしまう面があります。ただ、これまでに論文に書いた内容は、絶対にひっくり返されることがないと思っているので、救われています。 &br; また、閉鎖系温室内で栽培したリンゴ樹を使って、「9月下旬〜10月上旬に10万細胞程度の火傷病菌を結果枝に接種すると(実際の圃場で、秋に、結果枝に10万細胞程度いるかどうか示すデータはないが、細菌数として異常に大きな数でもない)、それは離層を通過し果実内に侵入しうる、しかし果実には病徴が現れない」、という結果を得ています。 &br;(これらの過程で、暗闇でほのかに光るリンゴという幻想的なものを見ることができました。) &br;(6)所感:我々が果実伝搬の可能性があると言っているのだから、輸出側は再度よく調べ直して欲しかった。ただ、可能性がゼロであることを証明するのは、困難なことですが。 &br;(7)不愉快というわけではないのでご心配なく:ただ修正しただけです。私は悪意がなければ、相当に無神経なことでなければ、腹を立てたりすることはありませんから。 +''名前書き忘れました'' &color(blue){畔上耕児}; -- &color(green){&new{2006-03-16 (木) 01:08:47};}; &br; 済みません。 +''傷だらけのガラス玉でした'' &color(blue){畔上耕児}; -- &color(green){&new{2006-03-16 (木) 01:27:18};}; &br; またまた修正:(5)の3段落目、「十分中心」は「自分中心」 &br;でした。お恥ずかしい。 #ncomment